ある日突然やってくる…

相続税 連帯納付義務の恐怖

父が亡くなってから10年後に、「兄の支払うべき相続税」の支払い通知が税務署から届いた――。

「なぜ?」と思いたくなるような事例だが、このようなケースは、実はそれほど珍しくありません。

 

 

自分の相続税を納付すれば、「相続の『税金』の問題は終わった」と考えるのが一般的な感覚である。しかし、相続税には「連帯納付義務」があり、共同相続人の誰かが税金を滞納すれば、相続により受けた利益相当額を限度として、別の相続人に請求が行く仕組みになっているのだ。

 

ちなみにこの制度、国税当局が「相続税を円滑に徴収するため」に導入されたのだが、支払う納税者にとってはたまったものではない。

しかも、連帯納付義務の恐ろしいところは、「延滞税」も含めて請求される点。延滞税の税率は年14.6%と高率なため、6年もたてば税額は2倍に膨らんでしまう。

また、「いつ」「どれくらいの額」が連帯納付義務者として請求されるのか分からないことも、相続人にとっては不安要素である。

 

通常、他の相続人が相続税を完納したかどうか知ることはないし、他の相続人の滞納を防ぐ方法もない。そのため、莫大な延滞税付きで“突然”納付を迫られ、それを支払うだけの現金がなければ、最悪の場合には、差し押さえということもあり得る。

また、遺産分割協議の際に「争続」となっていれば、相続の終了は「縁切り」を意味する。その後は連絡を取り合うこともないはずだが、そのような場合でも連帯納付義務は付いて回る。「不公平」とまでは言わないものの、納税者感情としては、やはり納得がいかない。

ところで、連帯納付義務の起因となる相続には、いくつかのパターンが存在する。例えば「相続税を支払っていないにもかかわらず、相続財産を借金返済に充ててしまったケース」「相続した土地が延納中に値下がりし、これを売却しても未納税額に足りないケース」は、後に連帯納付ということになりやすいパターンの代表格だ。

 

そのほか、自分以外の相続人が相続時精算課税を選択している場合も気を配っておきたい。相続時精算課税により贈与を受ける、その贈与財産は将来の相続財産に加算される。そのため、相続の際に具体的な相続分がなかったにもかかわらず税額が発生することも起こり得る。

相続発生前に贈与財産を使い切っていれば、相続税額を納められないということになるわけだ。

 

 

なお、平成23年度税制改正では、相続時精算課税の対象として「孫への贈与」が追加された。これにより、通常は相続権を持たない孫が、相続の場面に顔を出すケースが増えると見られる。相続時精算課税を適用した共同相続人がいる場合は、これまで以上に注意が必要となる。

できることならば連帯納付義務者にはなりたくないもの

だが、事前に対策を練ることはできないのだろうか。

 

究極的には「相続税を払わないだろうな」という人には、なるべく財産

を相続させないのが最善の策となる。

 

しかし、それこそ「争続」のもと。そう簡単にはいかない。では、より現実

的な対策はないのだろうか。

「相続人全員が相続税を完納できるような遺産分割を行うことが重要。つまり、相続人それぞれに課税される税額を先に計算し、その後で初めて現金資産を分割するのが良い」「相続税の申告は一緒に行うべき」といった対策を挙げる。

 

しかし、相続人のひとりが「借金の返済に充てたいから、現金は自分に相続させてくれ」と言い出すケースもあるだろう。最も連帯納付に直結しやすいケースなのだが、家族間なら情もあるので「まぁ、大変だよな…」となりがち。このような場合は、税理士などの第三者に、相続税の納税まで見てもらうのが良いのでは。理想的な遺産分割ができなければ、相続人全員が納付したことを確認すること以外に手はなさそうだ。

 

ちなみに、連帯納付義務者として相続税を請求された場合、救済策は存在しない。例えば、「延納はできないのか」と考える人もいるだろうが、延納申請は、相続税の納期限までに行うもの。つまり、延納は不可能ということになる。

全額支払うだけの資金がなければ、税務署に相談し、分割にして支払うか、または、借り入れをして一括で支払う以外の選択肢はない。延滞税の税率を考えると、金利の低い金融機関で借り入れをしてでも全額を納付するのが良い。

また、どうしても納得できなければ「異議申し立て」をすることも可能だが、「勝てた事例はほとんどない」というのが実情だ。

 

 

平成23年度税制改正大綱では、平成24年度改正に向けた検討事項として、「相続税の連帯納付義務のあり方の検討」が盛り込まれた。議論の方向性はまだ見えないが、納税者にとって納得のいく制度へと生まれ変わ

ことが望まれている。

 

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